脚の長さコーディネーター®とは
脚の長さコーディネーターは、数ミリ単位の脚長差を補正し、骨や関節疾患の予防に焦点を当てるスペシャリストです。
脚の長さに差がある人は9割にも及ぶと言われていますが、その脚の長さを測る機会は今の社会サービスの中ではほとんどありません。しかし、脚長差は腰痛や膝痛の原因や、側弯症を引き起こす可能性があります。脚の長さコーディネータ®は、骨盤の左右差を評価し、補高用インソール(足底板)を使用して脚長差を補正し、不調を予防します。
9割の人に1cm以下の脚長差があると報告されています。
保険診療の適応となるのは3cm(30mm)以上の脚長差ですが、近年では医療的には診断のつかない数ミリの脚長差を持つ人が多いことがわかっています。実際、約9割の人が1cm以下の脚長差を持っていると言われ、1.0cmの脚長差でも筋活動に差が出るという報告もあります。
これまで、3cm未満の脚長差については歩行中の筋活動に有意差が見られないと考えられてきましたが、数ミリの脚長差が不調を引き起こしている可能性が高いと推測されます。さらに、変形性膝関節症や変形性股関節症で手術をした人の脚長差からも、数ミリの脚長差が骨や関節の病気のリスクを高めていることが示唆されています。
-
変形性膝関節症で手術をした人の
脚長差の割合(n=196) -
変形性股関節症で手術をした人の
脚長差の割合(n=81)
参考:本多裕一:補高による脚長差歩行時の股関節周囲筋活動に関する一考察.理学療法学 Supplement,2009,A3O3009
-
1.0cm以下の脚長差の割合(n=31)
2019年に当協会で実施された調査では、数ミリの脚長差のある方で破行(歩き方の異常)がみられた方の割合としては左右の脚長差6-7mmが多く、平均すると5.4mmでした。数ミリの脚長差が姿勢や歩行に影響を与えていることが示されています。
数ミリの脚長差を考慮し、適切な補正を行うことは、骨や関節の病気の予防に重要です。
脚の長さコーディネーターは、骨・関節疾患の予防の視点から、この数ミリ単位の脚長差を補正することのできる専門家です。
脚長差の見極め方
脚長差の補正には、原因に合わせた対応が求められます。脚長差は、原因によって主に2種類あり、脚の長さコーディネーター®︎はクライアントの脚長差の原因を見極め、補正だけでなく適切な助言・指導を行うことが求められます。
●器質的脚長差
先天性または発育期の成長抑制による骨格、変形性関節症などの変性疾患、人工関節置換 術後などの術後後遺症
●機能的脚長差
骨格ではなく、関節の動きや身体の使い方の誤学習によるもの
踵部にインソールを入れることで、歩行時の衝撃吸収が促進され、骨や関節への負担が軽減されます。補正後には88%の方が筋骨格系の疼痛が軽減したと報告されています。
実際に、数mmの脚長差が不調を引き起こしていた方々からは、インソールの補正によって、「腰の痛みが全くなくなりました」「安定して歩けるようになりました」という声をいただいています。
補正には、1mm単位で調整が可能な補高用インソールが使用されます。踵に挿入する方式なので、調整が簡単で、自分に合った正確な補正が可能です。
補高用インソールについて(開発の経緯)
「補高用インソール」は、当協会代表理事 中村尚人(理学療法士)が開発に携わりました。開発の経緯やインソールの特徴について、医工連携オンラインピッチ(日本医工ものづくりコモンズ・ 日刊工業新聞が共催)プレゼンテーションを行いました。
脚の長さコーディネートの流れ
脚長差のコーディネート(補正)は3ステップで実施します。
1 アセスメント
各種検査方法を用いて、脚長差を数ミリ単位で測定します。また、専用アセスメントシートを使用し、骨格特性や姿勢・歩行をチェックします。日常生活の習慣、既往歴や過去のスポーツ歴なども聴取し、脚長差の原因を追求します。
2 補正
インソールを短脚側の踵に入れ、再度姿勢・歩行を確認します。
※単に高さを合わせて終わりではなく、実際の動作を必ずチェックし、補正が合っているかを見極めるスキルが求められます。
3 運動指導
補正後、インソール着用下で、歩行指導や立位でのトレーニング指導を実施します。また、個々の身体機能や脚長差の原因に合わせて生活指導や助言を行います。